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蚕(かいこ)(1990年4月 62歳)



愛ちゃんは4年生の時、家で蚕を10匹程 飼っていました。 それは済州邑内にあった農業学校に友達のお父さんが勤めていたので一緒に行った時、農業学校では色々な物を、実習用に飼っていました。

その中で初めて見る珍しい物に蚕の幼虫がありました。 愛ちゃんは、虫は嫌いだけれど、白い蚕の幼虫が盛んに桑の葉を食べている様子が可愛かったので欲しくなったのです。

蚕は教室くらいの広さの部屋に多くの棚があって、その中で飼われていました。 初めて見る虫なので、それが絹糸を作る蚕の幼虫だなんて、小学4年生の愛ちゃんには全然知る由も有りませんでした。

友達に言ったら、すぐにお父さんに要件を伝えてくれて、10匹くらいと桑の葉を幾らか新聞紙に包んでくれました。 そして飼育の要領を簡単に説明してくれました。

愛ちゃんは家に持って帰ると、ボール箱に入れて飼い始めました。 頭を真上から円形を描きながら真下に下ろして桑の葉を美味しそうに食べています。 同じ動作を繰り返しながら、ずっと食べ続けていました。 10匹も居るのだから、見応えが有りました。

桑の葉は家の隣の畑に多く植えられていたので、黙ってこっそり取って来きました。 済州島には蚕を飼っている農家が多かったようで、桑畑もアチコチに有りました。

愛ちゃんは学校から帰ると、毎日新しい桑の葉を取って来ては、食べ残した古いのと取り変えました。 箱の底には丸いころころとした黒い糞がいっぱい溜まっていたので、それも掃除しました。

春には3cm位だった小さな蚕が、夏には8cm位まで大きくなり、太さも鉛筆より太くなり、その頃から余り桑の葉も食べなくなり、そして今度は口から細くて白い糸を吐き出すようになりました。

繭を作り始めたのです。 友達に聞いたら、麦藁か細い枯れ枝を入れてやると良いよと言うことだったので入れてやりました。 蚕は繭を作るのに良い空間をみつけると、体を回転させながら、自分の体を包み隠すように糸を出し、やがてスッポリと繭の中に入って見えなくなりました。

秋から冬にかけて、蚕の繭は全然変化がないので、愛ちゃんは箱の中に入れたまま、大事に仕舞って置きました。 春になると箱の中でゴソゴソと音がするので恐る恐る開けて見ると、繭から成虫が出て来て、卵を産んでいる所でした。

友達が黒い所によく卵を生むと言うので、白いボール紙に墨で字や線を描くと、本当に黒い所にだけ卵を生みました。 卵の数は数え切れない位です。 愛ちゃんは10匹でも大変だったのに、こんなに多くの蚕が生まれたら大変なので、捨ててしまいました。

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